元関東軍大尉の賀屋達馬は、五族協和の王道楽土を築く野望に燃える石原完爾中佐に呼ばれ、3年ぶりに満州の土を踏んだ。賀屋が受けた命令は、関東軍の戦費を極秘裡に調達すること。さっそく彼は満州一帯に銀行や工場を持つ大財閥・劉宗仁に目をつけ、大陸浪人の土門正吾とともに奉天第一銀行が発行する1億元の現大洋票を奪取。時あたかも満州事変が勃発し、賀屋はつづいて満州国建設の工作資金捻出の為、高値になっていた大連の塩の販売にとりかかった。だがその時、部下2人の裏切りにあい、危うく金と命を奪われそうになるが、そこへ現れた馬賊の一団が彼の窮地を救った。しかも驚いたことに、馬賊の女頭目はかつて賀屋と愛を誓いあった中国人の歌姫・張蓮紅であった。再び愛しあう2人だったが、今や関東軍の「影の銀行」とまで呼ばれるようになった賀屋は満州全土に拡大した戦線のため、ますます巨額の資金が必要となり、遂に阿片を扱うことになる。



腹心の部下・土門に裏切られ、蓮紅が内密に彼を処刑する。また理想と現実との狭間で苦悶する日々を送る賀屋は蓮紅とともに上海へ移り、軍関係の阿片を一手に扱う山見剛とともに国民党の長老・唐紹儀と取り引きする。だが、そのことが上海の秘密結社・青幇(チンパン)の首領・杜月笙の知るところとなり、唐紹儀は暗殺された。さらに阿片を奪取して燃やそうとする抗日組織の動きも激しくなるが、賀屋と山見は彼らを罠にかけることに成功。組織のリーダーはかねてから顔を見知っている青年・竜だった。自分とは違い命がけで祖国解放のために闘っている竜の姿にうたれ、賀屋は彼を逃がす。昭和16年、遂に日本は米国に宣戦布告、太平洋戦争が始まる。最強を誇った関東軍も各地で苦戦を強いられ、賀屋は起死回生の最後の望みをかけ、かつてない大規模な阿片の取り引きを行うため再び満州に戻った。そして極寒の地ハルピンで、杜月笙の青幇や抗日組織との壮絶な闘いが展開される。阿片倉庫全体を火が包むなか、賀屋は杜月笙と一対一の闘いを行いかろうじて倒す。だが戦局は昭和20年、突如ソ連軍が国境を侵攻してきたことにより、日本の無条件降伏で幕を閉じた。賀屋は知り合いの間宮一家の引き揚げを助ける途中、ソ連軍の検問所で妨害にあうが、今は八路軍の将校になった竜に救われる。こうして戦争は終わった。蓮紅は突然現れた賀屋に驚き、「今度こそ2人で暮らせるわ」と喜ぶが、賀屋は彼女に別れを告げ、曠野の先、落陽の果てへ向かってどこまでも歩き続けるのだった。・・・幕

この映画、2時間半の長丁場ですが、オイラ的にはなんかドキュメンタリーを見ているようで、ドキドキ&ハラハラ感とか余りありませんでしたね。物語は主人公・賀屋の激動の人生(関東軍離脱→関東軍の影の集金係→阿片密売)を描いているのですが、緊張感不足は、日本軍の実写フィルムが随所にあるせいでしょう。例えば、昭和3年の中国奉天から、昭和6年9月18日満州事変、昭和7年3月1日満州国建国、昭和12年7月7日盧溝橋(ろこうきょう)事件からの支那事変、昭和16年12月8日真珠湾奇襲攻撃、昭和20年8月9日ソ連は日本との不可侵条約を破り参戦、8月15日日本無条件降伏により終戦、とこんな感じでしたからね。ウィキを見ると、やはり興行的には失敗だったようです。
以下、ウィキから引用
中国大陸での大規模ロケーション撮影も駆使した製作費50億円の超大作であり、にっかつ創立80周年の記念すべき作品であったが、それだけの超大作の監督を、映画経験のない小説家の伴野朗に託したことが話題となった。プロデューサーの藤浦敦は、2014年の「映画秘宝」誌連載聞き書きで、当初から事実上の監督は自分であり、ダミーとして何の権限も与えられなかった伴野は途中から現場に出てこなくなったと語っている。興行的には50億円の制作費に対して、配給収入が5億円であった。

1992年 日本 落陽〜THE SETTING SUN ★★
原作・監督:伴野朗
脚本:藤浦敦、根本哲史
撮影監督:山崎善弘
アクション監督:伊奈貫太
共同アクション監督:ユン・ピョウ
アクション・コーディネーター:シャオ・ハイ
音楽監督:モーリス・ジャール
主題歌:エラ・フィッツジェラルド「THE SETTING SUN」
出演:加藤雅也 賀屋達馬
ダイアン・レイン 張蓮紅、馬賊の女首領。賀屋の恋人。実は劉宗仁と3番目の女キャサリンとの娘で馬賊に預けていた。
ユン・ピョウ 杜月笙とげつしょう、秘密結社青幇(チンパン)の首領。上海阿片販売の元締め。
ドナルド・サザーランド ジョン・ウィリアムス、英国の悪徳商人で杜月笙と組んでる。
中村梅之助 劉宗仁そうじん、奉天の財閥
中村梅雀 間宮精一郎、満鉄の調査部サラリーマンで賀屋とは仲が良かった。
星野知子 山見三枝子、間宮と結婚して息子を授かる。
松浦豊和 竜、抗日組織のリーダーから中国共産党へ、最後は中国八路軍の将校となる。思想は違えど、賀屋とはお互いに2度ずつ命を助け合った。
嵐圭史 石原完爾、関東軍参謀で賀屋の上司。
小牧ユカ 劉小英、劉宗仁の娘だが、竜と共に中国共産党に入る。仕事は上海評論社の事務員。そこで賀屋と社長の山見のイラン阿片密輸をスパイする。その情報入手の為、杜月笙に拉致られ麻薬づけにされ、情報がガセの為、殺された。
室田日出男 山見剛、山見三枝子の兄で、妹と間宮の結婚を機に満鉄調査部を退社。上海に行き上海評論社を起業。この会社、実は関東軍の為に賀屋と共に阿片売買で金を作っていた。日本の敗戦とともに自害した。
金田龍之介 唐紹儀、上海の大物で賀屋と山見のイラン阿片密輸に絡み、杜に恨まれ、暗殺される。
にしきのあきら 土門正吾、はじめ賀屋のパートナーだったが2度裏切る。2回目の時に蓮紅に黒幕を見破られ、宗仁の妾と情事中に刺殺される。
芦田伸介 満鉄総裁、間宮が山見と賀屋が阿片売買してると報告したら、激怒して大連本社からハルピンに左遷させた。
島田正吾 曽三山、老三爺ろうさんいえ、元中華民国政府最高顧問。上海の豪邸に住み山見のバックについている。山見が死ぬ前には「貴方は戦犯として追われるよ。雲南の奥にある私の軍都に隠れないか?」と手を差し伸べていた。
尾藤イサオ 劉立教りっきょう、劉宗仁の息子で小英の兄。上海で杜月笙と組んでて、妹と知らず殺してて、共産党の竜に恨まれて上海南京路で刺殺される。
汀夏子 李梅、馬賊の張蓮紅の腹心。極寒の地ハルピンでの阿片取引の際、尹インに撃たれ死亡。
ナンシー・ラルマン 尹イン 、杜月笙の側近で彼女。極寒の地ハルピンでの阿片取引の際、蓮紅が射殺する。
水野晴郎 山下泰文少将、支那駐屯軍司令官。終盤、フィリピンのミンダナオ島に配置転換される。描写はされていませんが、ああっ、生きて帰れなかったでしょう。