リンジーは夫ダンが過って息子キャメロンの腕を折った事に激昂して別居中だ。夫から何回も電話が有っても無視。しかしキャメロンはパパに会いたがっていた。ある夜、浮浪者の女が家に侵入してきてキャメロンに襲い掛かるが、その時何かがキャメロンに憑りついて女の首をへし折って殺してしまった。場面替わって、とあるナイトクラブ。セス・エンバー博士は、ヘンリーという名前の中年男の側に行き「今何時ですか?」と尋ねた。ヘンリーは自分の時計を見て時間が進んでいないことに気が付き、博士から想い出のライターを渡されて、ヘンリーは突然自らが夢の世界にいるという直観を得た。動転するヘンリーに、博士は「貴方が今まで一緒にいた女性は悪魔なのだ。そいつが貴方の肉体に憑依しているだ。」と告げた。そして二人は即逃げ出して、途中巨人2人に襲撃されたが、窓から飛び降りて何とか逃げ切ることに成功した。ヘンリーは悪魔の憑依を振り切って無事現実の世界に戻ることが出来たのである。夢の世界では自由自在に動き回っていた博士だったが、現実世界では事故で車椅子に乗って移動する生活を送っていた。博士の手首には火傷の跡があった。さっきの夢の世界から現実の世界へ戻る際に、悪魔が博士に付けたものであった。博士の助手のオリヴァーは「悪魔たちが博士の動きに気付いてしまったようです。遅かれ早かれ、博士は夢の世界から戻れなくなるかもしれません」と警告したが、博士は悪魔との戦いをやめようとはしなかった。



そんなある日、博士はバチカンからやってきたカミラの訪問を受けた。カミラは博士にキャメロン・スパロウという名前の青年の悪魔祓いを大金を持って依頼しに来た。博士は自分はエクソシストではないと言って断ろうとしたが、カミラが「キャメロンに憑依しているのは、貴方もご存じのマギーです。」と言うのを聞いて動揺した。カミラを追い返した博士は知人のフェリックス牧師の元を尋ね、「キャメロンに取り憑いた悪魔はマギーなのか?」と訊いた。それに対し牧師は「否定出来ない」と答えた。牧師は博士に悪魔に憑依された人間の血から作ったC−79という血清が入った小瓶を渡した。牧師は「それを注射すれば、10秒間は正気でいられる。もしも悪魔に取り憑かれたなら、その隙に自殺しなさい。」と言ったが、博士には自殺する気なぞ毛頭なかったので血清は貰わなかった。
カミラを同伴して博士はキャメロンが暮らすアパートを訪ねた。母親であるリンジーは息子に悪魔祓いを受けさせることを拒絶したが、「自分の手法はエクソシストのものとは違います。私はキャメロン君の意識の中に潜入して、彼に『居心地の良いここは夢なんだ』と思わせるという手法を使います。そもそも、悪魔は憑依した人間を完全にコントロールする力を有していないのです。憑依した人間を夢の世界へと誘って、その隙を突いてコントロールしているだけなのです。」という博士の説明を聞いて、態度が軟化した。博士はキャメロンと会い二言三言話して、悪魔の正体がマギーであることを確信した。マギーも博士が来ることを事前に知っていた。その日の夜、博士は悪魔マギーに車で正面衝突され、殺された妻と子供のことを思い返していた。そして妻の遺品である十字架を握りしめながら、自分の身が朽ち果てるまで悪魔と戦うという決意を新たにするのだった。博士とオリヴァー、ライリーの3人は機材をリンジーのアパートにセットして悪魔に挑もうとしていた。博士を仮死状態にしてキャメロンと博士の脳の血流を同期させ、その時間を利用して博士はキャメロンの意識に潜入するという戦術だったが、これには弱点もあった。というのも、博士を心停止させられるのは長くても8分間であった。博士はその僅かな時間で悪魔を追い払う必要があった。しかも、その時間はキャメロンの状態如何で短くなる可能性が高かった。その不安は的中し博士は夢の中で腹から出血、何もできないまま1回目の挑戦は失敗に終わった。そして2回目はキャメロンが好きなパパ・ダンを説得して、ダンからキャメロンに話しかけて外側から戦うことにした。途中まではキャメロンの意識が打ち勝ち悪魔を追い出させそうだったが、ダンがキャメロンを抱きしめた瞬間に空中浮遊させられ落とされてダンは死んだ。悪魔を追い出す前に憑依されている人を触る事は危険であり、逆に憑依される可能性があるのだ。
博士は正気に戻る血清C−79をフェリックスの家に取りに行くと、中は荒らされて、拉致していた悪魔にのり移られた神父も死んでいた。博士が血清を取った後、出ようとするとフェリックスが立ちはだかり襲ってきた。フェリックスには悪魔がのり移っていたので、止む無く殺して博士は3回目の戦いに臨む。今度はキャメロンが大事にしていたリングを持ってキャメロンの夢の中に入る。遊園地でパパ(悪魔)と遊ぶキャメロンを説得して何とか脱出した。やったー、成功かと思われたが、まだ悪魔マギーが作った夢の中だった。博士は、キャメロンに抱きつかれ逆に悪魔マギーに憑りつかれてしまう。博士の夢は病院のベッドの上で起きて、そう、あの事故の直後だ。そして自分だけが怪我をして妻も息子も生きているのだ。博士は偽と知っていても瞬間、妻、息子を抱きしめて感情に浸り、そして逃走を開始する。その後窓から逃げようとした時、キャメロンを見つけ先に逃がして自分はマギーに捕まってしまう。現実世界ではライリーが乗り移られたことを察知してC-79を博士に投与。博士は正気に戻り魂の平安を求め、アパートの窓から飛び降り自殺した。博士は救急車に乗せられたが、心停止していて救急車内でAEDを4回連発する。付き添っているカミラは泣きじゃくっている。その時、博士の心臓が動き、突然眼を開いた。喜ぶカミラは博士の手を握った。しかし、それは悪魔マギーがカミラに見させた妄想だった。博士は既に亡くなっており悪魔マギーは博士からカミラの体内にのり移ってしまった。・・・幕

以前見たディカプリオのインセプションのホラー版のような作品です。エクソシズム映画が好きなオイラ的には、大変面白くて満足だったのですが、批評家からは酷評されていますね。(Rotten Tomatoesの批評家支持率は15%、平均点は10点満点で3.4点。Metacriticの加重平均値は30/100。シネマスコアはC-となっている。)これは、ラストが夢オチのどんでん返し2回が問題なのでしょうね。それと、悪魔マギーが博士にのり移った後(キャメロンからマギーは出ているはずだから、もうキャメロンは助かっているはず。)博士の夢の中の逃走中にキャメロンが出てきます。博士はキャメロンを先に助けてマギーに捕まるんですが、、、これは偽のキャメロンでしたー。こんな攻撃をされたら人間の脳では咄嗟に判断できませんから、到底悪魔に勝てる訳がありませんな、ラストのカミラの行動もしかりです、笑。あと酷評の原因は、もしかすると設定なのかもしれないと思いました。だってキリスト教から見れば「神あっての悪魔、悪魔あっての神」ですから、悪魔祓いが神の力不在で、科学で出来るというのがタブーなのかもしれませんねぇ。

2016年 アメリカ映画 Incarnate ★★★★☆
監督:ブラッド・ペイトン
脚本:ロニー・クリステンセン
撮影:デイナ・ゴンザレス
編集:トッド・E・ミラー、ジョナサン・チブナル
音楽:アンドリュー・ロッキングトン
出演:アーロン・エッカート セス・エンバー博士
カタリーナ・サンディノ・モレノ カミラ
カリス・ファン・ハウテン リンジー・スパロウ、キャメロンの母親
ダヴィード・マズーズ キャメロン・スパロウ
キーア・オドネル オリヴァー、博士の助手
エミリー・ジャクソン ライリー - 博士の助手
マット・ネイブル ダン・スパロウ、キャメロンの父親
カロリーナ・ヴィドラ アンナ・エンバー、博士の妻
エムジェイ・アンソニー ジェイク・エンバー、博士の息子
マーク・スティガー 悪魔マギー(正確には悪魔に取り憑かれた女の名前)
トーマス・アラナ フェリックス、エンバー博士の師匠の神父さん