794年平安京。上役の依頼を受けた源博雅(みなもとのひろまさ)は陰陽師の安倍晴明(あべのせいめい)の屋敷を訪れ、それをきっかけに、二人は馬が合い友情を育む。御所では左大臣・藤原師輔の娘・任子が敦平親王(あつひらしんのう)を出産し、師輔の権勢がだんだん増していった。これに対し、右大臣・藤原元方(ふじわらのもとかた)の娘・祐姫(つけひめ)には最近すっかり帝(みかど)のお渡りは無くなっていた。元方のライバル師輔への嫉妬と憎悪は倍増。その心を見透かした陰陽頭・道尊(どうそん)は元方を利用して都を滅ぼそうと企む。道尊は敦平親王に呪詛をかけて殺そうとしたが晴明と巫女・青音(あおね)の力によって阻止される。これに焦った元方は二人を捕えて呪詛の罪で処刑しようとするが、師輔の命令で二人は事なきを得て解放される。しかし去る途中、道尊に操られた兵士が晴明に襲いかかり、彼を守ろうとした青音が切り殺されてしまった。博雅は青音が死んだことを悲しむが、彼女はその日の夜に生き返った。驚く博雅に対し晴明は、彼女が桓武天皇の命令で人魚の肉を食べ不老不死となり、150年間都を守護してきた巫女であることを伝えた。



道尊は次の一手として祐姫を操り、帝と敦平親王を殺させようとする。晴明と博雅は帝の側に控えて、偽の藁人形に術をかけて祐姫をおびき寄せるが、そこで博雅は自分が夜ごと会って想いを寄せている女性、望月君(もちづきのきみ)の正体が祐姫だったことに気付く。祐姫も博雅の存在に気付き正気を取り戻すが、道尊の術によって鬼に変化させられてしまう。それでも、博雅は祐姫を愛しかばうが彼女は帝への嫉妬に駆られて鬼になった自分を見られたことに傷つき自害。そして、父親の元方も道尊のやり方に恐怖を感じ、彼の正体を書状に記して自害する。
追い詰められた道尊は、150年前に兄・桓武天皇に無実の罪で殺され、悪霊と化した早良親王(さわらしんのう)を復活させて自らの体を差し出して合体。その後、国中の悪霊を復活させて都を襲う。博雅は祐姫の仇を討つため道尊と戦うが全く歯が立たず、自らの射た矢で殺されてしまう。その後、駆け付けた晴明は号泣し悲しむが、青音が自分の命と引き換えに、博雅を生き返らせるよう促す。晴明は青音の命を使い博雅を生き返らせ、二人は道尊と対峙。その時、博雅の身体の中に宿っていた青音の魂は、かつて愛し合った早良親王の魂と再会し、桓武天皇が早良親王を死に追いやったことを悔いていたことを告げる。青音の言葉を聞いた早良親王は優しい人間の心を取り戻して、彼女に寄り添い二人で天へ成仏していく。取り残された道尊は晴明を味方に引き入れようと画策するが、拒否されたため彼に一騎打ちを挑む。晴明は道尊を結界の中に封じ込めて力を奪い、観念した道尊は自ら命を絶った。全てが終わり晴明邸を訪れた博雅は再び酒を酌み交わしながら笑い一時を楽しむのだった。・・・幕

平安時代の人と鬼が共存する世界で、陰陽師安倍晴明の活躍を描きます。清明のシニカルな雰囲気と、友情を育む源博雅のコミカルな良い人間ぶりが面白い対比ですね。そして脇を固める道尊の目いっぱいの悪役ぶり、不老不死の真っ白い顔の青音の不気味さも際立っていました。また、道尊が唱える呪文=早良親王の恨み言葉、「我怨天子無絶期、われてんしをうらむこと、たゆるきなし。」は迫力ありました。

2001年 東宝 ★★★
監督:滝田洋二郎
原作:夢枕獏
脚本:福田靖、夢枕獏、江良至
音楽:梅林茂
VFX:オムニバス・ジャパン
出演:野村萬斎 安倍晴明
伊藤英明 源博雅
今井絵理子 蜜虫(みつむし)
夏川結衣 祐姫
矢島健一 藤原師輔
石井愃一 藤原兼家
国分佐智子 任子
萩原聖人 早良親王
柄本明 藤原元方
岸部一徳 帝
小泉今日子 青音
真田広之 道尊