広告会社CEOのロジャー・ソーンヒルはホテルでの会合の最中、別の人物ジョージ・カプランに間違えられ、広壮な邸宅に拉致らてしまう。そこで待っていたタウンゼントという男は、彼をCIAのスパイのカプランと決めつけ、どこまで情報を嗅ぎつけたのかを教えろと迫る。ロジャーが人違いだと訴えてもお前の予定はすべて把握していると言って受け付けない。ロジャーがあくまで否定すると、男の手下たちが強引にバーボン1本ストレートで飲ませて酩酊させて、車に乗せ崖から転落させて殺そうとする。彼は辛くも逃れるがパトロール中の警官に逮捕されてしまう。顧問弁護士を呼んで、すぐに裁判が行われる。ロジャーは自分の証言を証明する為、警察を連れて邸宅を訪れると、昨日会った夫人は彼は酔って訪れてベロべロになるまで飲んで帰ったと嘘の証言をする始末。ロジャーはカプランを探し出して自分の無実を証明しようと母を連れて拉致された現場のホテルに戻る。しかしホテルの客室にカプランが宿泊している形跡はあっても当人を見た者は誰もいない。そのうえ従業員達は自分がカプランだと思っているらしい。そのうち昨日の手下たちが、迫ってきたのでホテルから逃走し、タウンゼントが国連で演説する予定と聞いたのを思い出すと、今度はタウンゼントを追って国連本部ビルへ向かう。ところが国連のロビーで会ったタウンゼントは、邸宅にいた男とは別の人物だった。2人が噛み合わない会話をしていると、そのタウンゼントの背中に手下の一人が投げたナイフが突き刺さる。ロジャーは殺人容疑者として新聞に写真入りで報道されてしまう。


政府CIAの会議室では、教授と呼ばれるボスを中心に予想外の事態への対応を協議していた。タウンゼントに成りすました男は、実はヴァンダムという共産圏のスパイの親玉で、教授たちはヴァンダム一味の中に自分たちのスパイを送り込んでいて、既に2人消されていた。カプランは教授たちが創造した架空のスパイで、ヴァンダムの注意をカプランに向けさせることで味方のスパイを守ろうという作戦だった。教授たちはスパイ合戦に巻き込まれたロジャーに同情しつつも味方のスパイの安全のため、あえて何もしないことに決める。架空の人物とも知らず、なおもカプランを追い求めるロジャーは、彼がシカゴに向かったと知ると駅から特急寝台列車に乗る。その車内でイヴ・ケンドールという女性と親しくなる。彼女はソーンヒルが指名手配中であることを承知していて、彼を自室に招き入れて匿い一夜を共にする。ところが同じ列車にヴァンダム一味も乗っていて、実はケンドールは彼らと通じていた。シカゴに着くと彼女はカプランと連絡をとったと嘘を言って、ロジャーを郊外のプレイリー、広大な平原に向かわせた。しかし彼がその平原で待っていても、いつまで経ってもカプランは現れず、そのかわり農薬散布の軽飛行機が襲いかかってきた。平原を縦横に逃げ、とうもろこし畑に隠れるロジャーを追い回すうち、軽飛行機は通りかかったタンクローリーに衝突して炎上してしまう。野次馬の車を盗み、町に戻ったロジャーは、カプランが宿泊しているはずのホテルでケンドールを見つけ部屋を訪問。すでに彼女の素性を怪しんでいたロジャーは、客室をこっそりと出て行った彼女の後を追う。向かった先は骨董品のオークション会場だった。会場に乗り込むとケンドールがヴァンダムと手下に囲まれて客席に座っていた。ヴァンダムは彼の出現に驚くが、出展品の人形を落札するとケンドールを連れて会場を出ていく。ロジャーは、手下たちに見張られて殺されそうになるが、とっさにオークションの客に扮して出展品にでたらめな値を付けて会場を混乱させ、警官を来させて連れ出される形で脱出に成功。彼を乗せたパトカーが向かった先は空港だった。その場で教授が初めてロジャーに接触してすべての事情を説明する。ケンドールこそは教授たちがヴァンダム側に送り込んだスパイだった。ヴァンダムは、彼女が敵側のスパイのカプラン(実はロジャー)と懇意であることを知り彼女を疑い始めていた。教授はロジャーに彼女を助けるために協力するよう要請。教授とロジャーは飛行機でヴァンダムのアジトがあるラシュモア山まで飛び、ヴァンダム一味を待ち構える。そこのカフェテラスに彼らを呼び寄せ、彼らの目前でケンドールが拳銃でカプラン(実はソーンヒル)を撃ったように見せかけることで、彼女に対するヴァンダムの疑念を晴らすという作戦だった。作戦は首尾よくいったが、森の中でロジャーはケンドールがヴァンダムに連れられて出国することを知らされた。憤激したロジャーは彼女をヴァンダムから奪う行動に出る。彼らのアジトに潜入して様子をうかがうと、すでにケンドールの正体は見破られていて彼女を殺害する予定になっていること、そして彼らが盗み出したマイクロフィルムは骨董品の人形の中にあることを知った。それらの情報を自分のイニシャル付きのマッチを投げて、密かにケンドールに伝えるが飛行機の離陸は間近に迫っていた。ケンドールは、機内に乗せられる寸前にヴァンダムの手から人形を奪って逃げ出す。ソーンヒルと合流して2人で逃走するが、ヴァンダムの手下たちに歴代大統領の顔が岩に刻まれた巨大なモニュメントまで追い詰められる。2人が崖下に転落させられそうになった所で、教授が要請した保安官の銃に助けられた。画面が切り替わって、寝台車のベッドの上でロジャーとケンドールが抱き合うシーンで幕となった。

長丁場のスパイアクション、137分です。途中までは、広告屋がスパイ合戦に巻き込まれ、よくよく不幸なロジャーだなと思ってましたが、後半は007のように脱走、偵察、救助と大活躍でしたね。ヒッチコック映画にしては、ちょっと長めなキスシーンがしっかり有って、珍しくプチ・エロでした。

ウィキよりトリビアを引用
恒例のヒッチコック監督のカメオ出演、本作では冒頭のクレジットタイトルの最後、発車直前のバスに乗ろうとした男性がドアを閉められてしまうシーンに登場する。
なお、ヒッチコックが女装して列車の乗客として出演しているという説があるが、この女性客を演じているのは『裏窓』にも彫刻家の役で出演したジェスリン・ファクス (Jesslyn Fax) である。
食堂車のシーンで、ケンドールが “I never discuss love on an empty stomach”(私は空腹で愛を論じたことがない)と言っているが、もともとの台詞は “I never make love on an empty stomach”(私は空腹でセックスしたことがない)であり、彼女の唇の動きもそうなっている。過激すぎる台詞として声だけ差し替えられた。
ソーンヒルが農薬を散布する軽飛行機に襲われる有名なシーンは、カリフォルニア州ベーカーズフィールドで撮影された。飛行機はボーイング・ステアマン モデル75でアメリカ軍が第二次世界大戦中に練習機として導入し、終戦後は民間に払い下げられたため、実際に農薬を散布する農業機として利用されていた。
この映画の中のミスの一つがメイキングで明らかにされている。ラシュモア山のカフェテリアでケンドールがソーンヒルを拳銃で撃つ場面、ケンドールが発砲する「前」に、画面右手の奥にいる少年が両手で耳をふさいでしまっている。(1°45'30") 何度もリハーサルを繰り返したのが原因のようで、進行役のエヴァ・マリー・セイントは「なぜこのテイクが残されたのかは謎です」と語っている。
ラストシーンで、ソーンヒルとケンドールが寝台車の中で抱き合った後、列車がトンネルの中に入っていく。ヒッチコックは「あれは、これまでわたしが撮った映画のなかでもいちばんわいせつなショットだ…列車は男根のシンボルだ」と語っている。
ジェームズ・ステュアートはソーンヒル役を熱望していたが、ヒッチコックは婉曲に断ったという。ヒッチコックは、『めまい』がヒットしなかったのはジェームズ・ステュアートがラヴ・ストーリーを演じるには年を取りすぎていたからと考えていたようで、『北北西に進路を取れ』はスパイ・アクション映画ではあるが、ラヴ・ストーリーが大きな位置を占めているため、ジェームズ・ステュアートよりも若々しいケイリー・グラントを選んだのだろうとトリュフォーは推察している。

1959年 アメリカ映画  North by Northwest ★★☆
監督、製作:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:アーネスト・レーマン
撮影:ロバート・バークス
音楽:バーナード・ハーマン
出演:ケーリー・グラント ロジャー・ソーンヒル
エヴァ・マリー・セイント イヴ・ケンドール
ジェームズ・メイソン フィリップ・ヴァンダム、国家機密を共産圏に漏洩するスパイのボス
ジェシー・ロイス・ランディス クララ・ソーンヒル、ロジャーの母
レオ・G・キャロル 教授、アメリカ中央情報局CIAの本作戦の司令官。
エドワード・ビンズ ジャンケット警部
ジョセフィン・ハッチンソン 偽のタウンゼント夫人
フィリップ・オバー レスター・タウンゼント、国連ビルで投げナイフで殺される。
マーティン・ランドー レナード、ヴァンダムの右腕
アダム・ウィリアムズ ヴァレリアン、ヴァンダムの手下
ロバート・エレンシュタイン リクト、ヴァンダムの手下