摩天楼を見渡せるアパートの一室。優秀な学歴のフィリップとブラントンが殺人を犯したのは、まさにその場所だった。動機はなく、自分たちがずば抜けて人より秀れていることを試す、ニーチェの理論を実践したに過ぎなかった。2人はもっとスリルを味わうために被害者デビッドの父、恋人ジャネット、被害者の元カレだったケネス、伯母アトウォーター、青年たちの先生だった大学教授ルパートを招いてパーティーを催す。死体入りのチェストの上に、ごちそうを並べて皆に食べさせたり、殺人に使ったロープで本を縛って父親に贈ったりして、優越感を味わっていた。


それでもデヴィッドがなかなか現れないので、みんな心配し始める。冷静なブラントンとは対照的に、フィリップは罪の恐ろしさに次第に冷静さを失っていく。ルパートは自論で、世の中には法律など超越した超人がいてもいいと話しパーティでも繰り返す。2人の異常さに徐々に気づいたルパートは、帰りに偶然被害者の帽子を見つける。一旦は帰るが嘘で煙草入れを忘れたと電話して再び部屋を訪れる。フィリップは限界を越えて、すっかりとり乱していた。教授はフィリップのポケットの拳銃をとりあげようとする。そして推理が始まり、チェストを開ける。・・・幕

パトリック・ハミルトンの舞台劇の映画化で、1924年に実際に起きた少年の誘拐殺人事件・「レオポルドとローブ事件」を元にしているそうです。
パーティー中、主人公のデビッドが言います。「優秀な人間は劣った人間を殺しても良い。殺人は芸術だ。そして、デビッドの父が「それはヒトラーの超人理論(ニーチェ主義者)と同じだ。人間性を侮辱する聞き捨てならない発言だ。文明社会に対する侮蔑でもある。」ナチスドイツは3年前に崩壊していますが、やはり、当時は恐怖の象徴だったことが、よく分ります。ヒッチコック自身はイギリス人で、徹底的にミサイル攻撃されてますからね。
さて、この映画は、サスペンスとしての緊張度はピカ一です。オイラが感心したのは、ルパートが帰る時、DKのイニシャルの入った帽子を間違えて渡され、デビッドがここに来たことに気づくシーン。これで彼が謎解きするんだなと分かりました。そして、その後、家政婦のウィルソンさんが死体の入ったチェストの上の料理を下げて、テーブルクロスを取って、本を置いてとじりじり撮ってるんですが、このシーンは、「んっ開ける?開けない?」と抜群の演出。そして、焦りまくりの自暴自棄になるフィリップ。こればかりはブランドンでも制御できなくて、ラストでは、ブランドンのポケットの銃も見破られ、チェストも見られてしまいます。ルパートは窓を開けて銃を乱射して、3人で警察の到着を待っていて幕でした。

1948年 アメリカ映画 Rope ★★★★
監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作:シドニー・バーンスタイン、アルフレッド・ヒッチコック
原作:パトリック・ハミルトン
脚本:アーサー・ローレンツ
潤色:ヒューム・クローニン
撮影:ジョセフ・ヴァレンタイン、ウィリアム・V・スコール
音楽:レオ・F・フォーブステイン
出演:ジェームズ・スチュワート ルパート・カデル
ファーリー・グレンジャー フィリップ・モーガン
ジョン・ドール ブランドン・ショー
ジョアン・チャンドラー ジャネット・ウォーカー
ダグラス・ディック ケネス
イディス・エヴァンソン ミセス・ウィルソン
セドリック・ハードウィック ヘンリー・ウィルソン
コンスタンス・コリア アニータ・アトウォーター
ディック・ホーガン  デイヴィッド・ケントレイ