第一部 旅立ち 1957年11月~
アルジェリア戦争ただ中のフランス。港町シェルブールに住む20歳の自動車整備工ギイと17歳のジュヌヴィエーヴは結婚を誓い合った恋人同士。20歳のギイは病身の伯母エリーズと、17歳のジュヌヴィエーヴはシェルブール雨傘店を営む母エムリ夫人と暮らしている。エムリ夫人は2人が若過ぎる事を理由に結婚に反対するが、2人は将来生まれて来る子供の名前(女の子だったらフランソワーズ)を考えたり自分たちのガソリンスタンドを持つ夢を語り合ったりと幸福な恋愛を謳歌していた。そんなある日エムリ夫人に莫大な8万フランの納税通知書が届く。切羽詰まっていたエムリ夫人は娘に説得され大切なネックレスを売る決心をして、娘を連れて宝石店へ行った。店主との交渉はうまく進まなかったが、たまたま居合わせた宝石商ローラン・カサールが、その場でネックレスを購入してくれた。やがてギイに召集令状が届きアルジェリア戦争において2年間の兵役を務めることになった。尽きる事無く別れを惜しむギイとジュヌヴィエーヴ。その夜2人はギイの部屋で結ばれた。ギイは幼馴染みのマドレーヌに伯母の世話を頼みジュヌヴィエーヴと永遠の愛を誓い合って、シェルブール駅で別れを告げ入営する。
第二部 不在 1958年1月~
ある日エムリ夫人は町でカサールと出会い食事に招待する。妊娠していることを知ったジュヌヴィエーヴはギイから2ヶ月に1回しか手紙が来ないことを不安に感じていた。ジュヌヴィエーヴが気分が悪いと休んだ後、エムリ夫人に引き止められたカサールはジュヌヴィエーヴに結婚を申し込むつもりだったことを打ち明ける。ジュヌヴィエーヴに出会いカサールは失っていた人生の目標を見つけることができたのだった。決めるのは本人なので押しつけないように頼み、カサールはまた旅に出る。手紙で妊娠を知ったギイからは2月に「男の子だったら名前はフランソワ」と喜びの返事が届く。だがギイを待ち続けていたジュヌヴィエーヴは次第にカサールに心を開き、子どもを一緒に育てようという求婚を受け入れる。結婚からしばらくしてエムリ夫人も店を処分し娘が住むパリへと移住する。


第三部 帰還 1959年3月~
足を負傷し除隊となって帰郷したギイはシェルブール雨傘店を訪れるが、店は所有者が変わっていた。ジュヌヴィエーヴの結婚と移住を聞かされたギイは自暴自棄となり、復職した整備工場も些細なトラブルで退職して酒と娼婦に溺れる。朝帰りした彼を待っていたのはエリーズ伯母の死の報せだった。ギイは出て行こうとするマドレーヌに「僕の力になってほしい。行かないでくれ。」と頼み、マドレーヌはとりあえず出て行くのをやめる。ギイは、マドレーヌに「仕事をしない今のあなたは大嫌い」と言われて一念発起し、伯母の遺産でガソリンスタンドを始めることに決めた。立ち直ったギイに、マドレーヌも心を開き、結婚する。
エピローグ 1963年12月~
ある雪の夜、妻マドレーヌと息子フランソワがクリスマスの買い物に出ていった後、一台の車がギイのガソリンスタンドに給油に訪れる。運転席にはジュヌヴィエーヴが、助手席には3,4才くらいの女の子が乗っている。入営の日、シェルブール駅で別れて以来の再会だった。事務所で短く言葉を交わす2人。金持ちそうな毛皮のコートに身を包むジュヌヴィエーヴ。娘の名はフランソワーズだと告げ、「会ってみる?」とギイに聞くが、彼は無言で首を振り、互いの幸せを確認し合うと「給油が終わったようだ」と言う。ジュヌヴィエーヴの車が去って行くのと入れ替わりにマドレーヌとフランソワが帰ってくる。すると、ギイは気持ちを切り替え、2人の帰りを大はしゃぎで迎える。ガラス窓のカーテンが家族3人で幸せに楽しく過ごす様子を映し出す。・・・幕

オイラが大好きなカトリーヌ・ドヌーブの出世作です。台詞は音楽に乗せた完璧なミュージカルで、POPS版オペラとも言えます。出演者の歌は素人のため、すべて歌手による吹き替えで録音されているそう。29分20秒からの別れを惜しむ2人が歌う、ルグランのメインテーマは涙を誘うシーンです。このメインテーマは、Jazzのスタンダードであり、色々な訳詞、インストで今でも演奏され続けています。しかしフランス語は音楽に乗せると言葉尻が優しいので、すごく綺麗に聞こえますね。改めて感じました。



1963年 フランス映画 LES PARAPLUIES DE CHERBOURG ★★★★
監督:ジャック・ドゥミ
製作:マグ・ボダール
脚本:ジャック・ドゥミ
撮影:ジャン・ラビエ
作詞:ノーマン・ギンベル
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ ジュヌヴィエーヴ・エムリ
ニーノ・カステルヌオーヴォ ギイ・フーシェ
マルク・ミシェル ローラン・カサール
エレン・ファルナー マドレーヌ
アンヌ・ヴェルノン エムリ夫人