カナダ・ハリファックスの港に可憐で清楚な身なりをした女アデル・ユーゴーが降り立った。フランスの大作家ヴィクトル・ユーゴーの次女である彼女は、かつて一度だけ愛し合った英国騎兵中尉アルバート・ピンソンを追って海を渡ってきたのだった。慎ましい下宿の部屋で来る日も来る日もピンソンにあてた手紙を書き続けるアデルだったが、一度も返信は無く異国での孤独と愛の焦燥にとらわれた彼女は連夜のごとく悪夢を見るようになる。それは敬愛していた姉のレオポルディーヌが舟もろとも溺れ死ぬ夢だった。本屋の主人ホイッスラーからピンソンには多額の借金があるという噂を聞いてもアデルは彼に恋文を届けることをやめない。ついにある日、ピンソンがアデルの下宿にやってきた。慌てて身支度を整えて迎えたアデルをピンソンは冷たく突き放す。彼女と結婚するつもりもなく、もはや関係は終わったのだと。そして両親の元へ帰るように諭した。アデルはピンソンに冷たい仕打ちを受けてもなお、彼に恋することを止めようとせず、何かに駆り立てられるかのように自らを狂気の淵へと追いやっていく。・・・


フランセス・V・ギールの原作『アデル・ユーゴーの日記』をトリュフォーが映画化。当時出始めだったイザベル・アジャーニの美しさと存在感を世に知らしめた作品です。これは実話だと映画の冒頭にありました。見ているうちに、アデルのストーカー具合がだんだん加速していって、ピンソンが何を言っても自分の都合の良いようにしか捉えなくなります。(寝る時に自分の激情を詩を読むように語るアデル。ここは流石ユゴーの娘と思いました。)うーん、もしかしたら最後は血みどろになるのか???、とオイラたちに思わせといて、そこはトリュフォー、そうはなりませんでした、笑。アデルは助けてくれたバルバドス島の黒人女に付き添われてフランスの父の元へ帰ります。実は、アデルはピンソン中尉を追っかけてバルバドス島に行きますが、彼と会っても無視します。もうアデルの心は荒み過ぎたのでした。そしてフランスの精神病院でそれから40年暮らしました。ストーカーの話でもギトギトにはならず、アデルは最後の一線は越えませんでした。
adele01
adele02
1975年 フランス映画 L'HISTOIRE D'ADELE H. ★★
監督、製作:フランソワ・トリュフォー
原作:フランセス・V・ギール
脚本:フランソワ・トリュフォー、ジャン・グリュオー、シュザンヌ・シフマン
撮影:ネストール・アルメンドロス
音楽:モーリス・ジョーベール
出演:イザベル・アジャーニ アデル・ユーゴー、偽名でアデル・ルーリー
ブルース・ロビンソン アルバート・ピンソン中尉
ジョゼフ・ブラッチリー ウィッスラー、本屋の主人で告らないがアデルが好き。アデルがいつも恋文の紙を買っている。なんか因縁じみているなぁ。
シルヴィア・マリオット 下宿屋のサンダース夫人。アデルには優しい母のような人。ユゴーの娘だと分かっても本人に言わず。本名を言わないという事は事情があるんでしょうと気を使ってくれた。