深夜、雨の中を帰宅中のポールはドーベルマンをはねた。傷ついたその犬を自宅に連れて帰ったポールは自宅の実験室で治療する。犬の腹の中には3匹の胎児がいたが、母親無しでは生きれない程小さかった。そこでポールは人工子宮の中にいれた3匹のうち、生き残った1匹に開発中の成長ホルモンを投下。母犬が死ぬ12時間中に、ある程度の大きさにする必要があった。子犬は2日と15時間で大きくなった。この実験に自信を持ったポールは、人間の胎児の実験準備にとりかかる。彼の友人ジムが院長をつとめる病院から、用だててもらうメドをつけた。ただし、絶対に病院に迷惑はかけないという条件で。数日後、ジムより自殺未遂の女性の胎児があるとの連絡が入った。ポールは、一緒に住む今はなき妻ニコルの妹マーサにも内緒で実験を開始。やがて人工子宮の容器の中で、胎児は赤ん坊の産ぶ声を上げた。だが成長ホルモンの投与を止めても赤ん坊の成長は止まらない。1日で1年分、2日で2年分と、急速な成長が続き老化も始まり焦るポール。ついに4週間なかばにして、成長は止まった。すでに成人と化した1人の女性がそこにいる。ポールは彼女にヴィクトリア(以下ヴィク)と名づけた。鏡をかじったりする彼女。まだ知能は赤ん坊であった。翌朝、マーサは友人と旅に出た。ポールはヴィクに特訓を始める。彼女の理解力、記憶力は抜群だが、道徳的なものが理解できない。「私、人間じゃないのね」と自分の成長過程を知ってつぶやく彼女に、ポールは返す言葉もなかった。


やがて、人付き合いも必要という事で息子のパーティに連れて行く。また、ヴィクは愛の行為を経験する為、ポールを求め愛し合う。その晩ポールの寝ている間に彼女を腹痛がおそった。早速、実験室で、自分をチェックする彼女。細胞が老化しているのだ。彼女は抑制剤を打ち、その場はしのいだ。翌日、彼女はパーティで知ったコリアの会社を訪れる。コンピューターを用いて昨夜の原因を詳しく知るためだ。結果、解毒剤としては未出産胎児から抽出できる脳下垂体液70mlを用いること。ヴィク茫然となり、その場を去った。その後、彼女の存在に疑問を持ち出したマーサを薬で殺し、ヴィクの胎児狩りがはじまった。金で買った売春婦より胎児摘出に失敗した彼女は、ポールの息子の嫁ヘレンを捕えた。妊娠5カ月のヘレンの胎児を摘出するためだ。ポールはマーサの死に疑問を持ち、急遽息子ゴードンと共に自宅へ戻る。そこで2人の見たものは帝王切開されたヘレンと実験に失敗し老いていくヴィクの姿だった。ヴィクは取り押さえようとする2人の内、ゴードンの背中をメスで刺して殺しカマロで逃走する。そして彼女を殺す決心をしたポールがあとを追う。カー・チェイスの末、カマロは事故って炎上。車から脱出したヴィクは老婆と化していて、ポールは彼女をしめ殺そうとする。そして、それを止めに入った警官たちの前で、ヴィクは1人の赤ん坊を残し死んでいった。・・・幕

最初はドーベルマンの犬で成長ホルモン・胎盤性ラクトゲンを試し、結局人間に試してしまうポール。マッド・サイエンティストまっしぐらです。そして成長したヴィクトリアが言います。「私は人間じゃない、この世界に存在していない。」と。成長を早められた人造人間ヴィクは、フランケンシュタインと通じる悲哀さがありますな。そして老化が止まらなくなり、ヴィクは生きる為、娼婦やヘレンの子供を摘出して、脳下垂体液を取り出そうとします。もうこうなると、ヴィクはエルジェーベト・バートリ状態です。ラストは老婆に変身、お腹の中には1回のセックスで出来たポールとの子がいました。「No」と絶叫するポールと赤ちゃんの泣き声で、物語は終わりました。見終わって考えると、途中からのヴィクの腹痛って、つわりだったのかもしれませんね。あと、ドーベルマン君の賢い事、賢い事。頭にきてプードル殺すと草花の中に隠すは、魚をごみ箱に捨てる、海でヴィクを助ける、買い物のお手伝い等ヴィクをサポートしてました。全体としては、中だるみも無く、テンポよく見れた佳作でした。

1976年 アメリカ映画 EMBRYO ★★★★
監督:ラルフ・ネルソン
原作:ジャック・W・トーマス
脚本:ジャック・W・トーマス、アニタ・ドゥーハン
撮影:フレッド・J・コーネカンプ
音楽:ギル・メレ
出演:ロック・ハドソン ポール・ホリストン
ダイアン・ラッド マーサ・ダグラス、ポールの元妻ニコルの妹
バーバラ・カレラ ヴィクトリア・スペンサー
アン・シェディーン ヘレン・ホリストン、ポールの息子の妻
ジョン・エレリック ゴードン・ホリストン、ポールの息子
ロディ・マクドウォール フランク・ライリー、チェスのチャンピオンだがヴィクトリアに押されっぱなし。
ジャック・コーヴィン ジム・ウィンストン、ポールの友達の医者。自殺未遂の女性からヴィクを取り出してポールに渡した。