ある日、会合で帰りが遅くなった探偵作家の八代竜介は駅から家に向う途中、美しい女性・加奈子から同行を頼まれる。八代は夜道の1人歩きは不安だということで、その女性を自宅まで送り届けるが、彼女は黒い外套と黒眼鏡に義足を付けた男に後をつけられていたようだった。その一週間ほど後の夕方、八代の家に加奈子が飛び込んできた。やはり義足の男に付きまとわれたのだという。加奈子が語るには、義足の男は出征前に一晩だけ共に過ごした彼女の戸籍上の夫・亀井淳吉だという。亀井の出征後、加奈子は空襲で家を焼かれ、亀井の親戚筋の賀川家に世話になるうちに亀井のいとこの賀川達哉と不倫になり、2人で大阪から東京に出て事実上の夫婦となった。やがて終戦後復員した亀井は加奈子を探し当てて復縁を迫ったが、加奈子が拒否したため、それ以来亀井は加奈子を付け回し始めたというのである。
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亀井の足音が聞こえなくなったため加奈子を送り出した八代の元に、今度は賀川の妻の梅子が訪れる。加奈子が取り乱していた理由を尋ねる梅子に、加奈子に付きまとう亀井を恐れてのことであると八代が説明すると、梅子はひどく動揺した様子で帰ってしまう。その夜、胸騒ぎを感じたのと加奈子に会いたい気持ちから賀川家を訪ねようとした八代は、家の前で近所の住人から変な物音と怒鳴り声が聞こえたと聞かされる。そうして家の中に入ると、達哉が鈍器で殴られて殺されているのを発見。さらに加奈子も首を絞められた状態で失神していた。その時、義足の足音が聞こえてきて、逃げ去る義足の男の後を追った八代たちだが、義足の男を発見することはできなかった。そして一命を取り留めた加奈子は、犯人は義足の男・亀井だと証言した。しかし、それ以来亀井の行方は杳として知れなかった。数日後、ふと義足の男が逃げ去ったと思われる道をたどっていった八代は、そこで粗末なお釜帽によれよれの袷と折り目のたるんだ袴を着た男がドブ川をさらっているところに出くわす。その男は金田一耕助と名乗り、水の中から義足の男が突いていたステッキと、偽の義足を掘り出した。金田一の発見と、八代も加奈子も義足の男の顔を見たわけではなく黒眼鏡と義足の姿だけで亀井だと思い込んでいたことから、義足の男は亀井ではなかったという疑いが出てきて、2人は何度も警察の取り調べを受けることになる。そんなある日、賀川の妻の梅子が毒をのんで自殺する。梅子が達哉殺しの犯人であろうという論調の新聞記事を読み、何となく物足りなさを感じる八代に、真犯人が凶刃を向ける。・・・

NHK-BSプレミアム、シリーズ横溝正史短編集 金田一耕助登場!第2夜。「500人に1人の割合で殺人を犯しても何食わぬ顔で生活している隣人がいる。」とテロップが流れて物語は始まりました。最初はストーカーの犠牲者のような加奈子でしたが、実は彼女こそキラーそのものでした。更に恋人の賀川も殺人仲間でした。そして仲間割れから、賀川に首を絞められた加奈子は逆に撲殺しました。賀川の妻の梅子は、家の恥隠しのために自殺。そして加奈子に惚れた八代はというと、死んだ梅子の意思を踏襲して加奈子を連れて逃亡、最後は二人で心中したとか。加奈子がキラーなのは良いとして、周りがどんどん自殺していって、力技の捻じ曲げ、ストーリー・クラッシュが半端じゃなかったですね、笑。最後に、金田一の謎解きのBGMは、ダリオのサスペリアのテーマが使われてました。

2016年 日本ドラマ ★☆
演出:佐藤佐吉
原作:横溝正史
撮影:杉中敏行
出演:池松壮亮 金田一耕助
松居大悟 八代竜介
福島リラ 加奈子
永野 賀川達哉
岩井志麻子 賀川梅子
村松卓矢 亀井淳吉