遠藤瑤子は映像モンタージュ技術が巧みな映像編集者で、首都テレビのニュース番組「ナイン・トゥ・テン」の編集を担当している。瑤子は放映時間直前に映像編集を仕上げるため、上司のチェックをすり抜けて虚偽報道スレスレの編集映像が流れるという事態が常態化している。それに不満を感じる同僚や上司は多いが、その一方で瑤子の映像編集が番組の高視聴率を支えていた。ある日、瑤子は郵政官僚と名乗る春名誠一から一本のビデオテープを渡される。ビデオテープの内容は、市民団体オンブズマン幹部で弁護士の吉村輝夫の転落死事故が、実は郵政省幹部の汚職事件に絡む計画的殺人であったことを推測させる物であった。瑤子はこのテープに編集を加え郵政官僚の麻生公彦が弁護士殺しの犯人かのような映像を電波で流す。犯人視された麻生は妻子は実家に戻り家庭が崩壊。TV局に乗り込み、自分は無関係と主張して謝罪を要求。さらに、郵政官僚として瑤子に接触した「春名誠一」という人物は郵政省には存在せず、瑤子が受け取ったビデオテープは捏造されたものだったことが判明する。麻生は一介の映像編集者である瑤子によって編集された映像がニュース番組で垂れ流しになっていることを知り、瑤子に執拗につきまとい謝罪を要求する。

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同じ頃、瑤子のプライベートを隠し撮りしたビデオテープが何本も瑤子に送りつけられ、瑤子はこれを麻生の仕業だと考える。ついには麻生の自宅に隠しカメラを仕掛けて盗撮し、仕返しとしてそれを編集したビデオテープを麻生に見せる。路上で激昂した麻生は瑤子に詰め寄り、マスメディアの人間として客観性に欠ける瑤子の姿勢を糾弾する。言葉に詰まった瑤子は麻生を突き飛ばし、麻生は道路脇の側溝に転落して死亡、瑤子はその場から逃げ出す。翌日、瑤子は目撃証言を恣意的に排して麻生の死が事故死であることを印象づける映像を作るも、またも瑤子に隠し撮りのビデオテープが届けられ、そこには瑤子が麻生を突き飛ばす瞬間がはっきり映っていた。隠し撮りをしていたのは麻生ではなかったのだ。逮捕後、容疑者として現場検証に訪れた瑤子は、報道陣の中に、家庭用ビデオカメラで自分を撮影している息子・淳也を発見する。淳也は父親の再婚により母親である瑤子とは今後会わないことを約束したため、思い出として母親の姿をビデオテープに納め、それを数度にわたって瑤子に送っていたのだった。最後の最後でそれを悟った瑤子は、カメラに向かって涙ながらに微笑むのだった。

人権無視して恣意的な映像を視聴率のために流しまくるTV局。そこで働く孤独なバツイチの編集女の末路を描いてます。当初は汚職事件の方に話が向かうサスペンスと思いましたが違ってました。批判すべきは過激報道が当たり前なTV局、そして人の気持ちを忘れかけている女が転落して、初めてその大切さを取り戻すって内容でした。しかしお母さんを愛している子供が盗撮者で、離婚して会えないからビデオを送っていたというのは、凄く可哀想な皮肉たっぷりなラストでしたな。

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2000年 日本 ★★★☆
監督:井坂聡
原作、脚本:野沢尚「破線のマリス」
音楽:多和田吏
出演:黒木瞳 遠藤瑤子
陣内孝則 麻生公彦
山下徹大 赤松直起、瑤子の部下
筧利夫 森島一朗、郵政省の麻生の上司
白井晃 春名誠一
中原丈雄 阿川孝明、瑤子の元旦那
堤寛大 阿川淳也、瑤子の息子
秋本奈緒美 麻生佳代子、麻生の妻
中尾彬 有川博文、首都TVの局長
鳩山邦夫 政治家、冒頭のTVインタビュー、本物でした。