昭和初期の東京。探偵小説家の江戸川乱歩は、根津界隈の骨董品屋で夫殺しの嫌疑をかけられている女性・静子に興味を持つ。この事件が未発表の自分の小説、つい先日発禁処分となった小説「お勢登場」にそっくりだった為である。乱歩は小説の中に自分の分身・明智小五郎を登場させて、妄想の世界に入り込み、静子(作品の中では、れい子)を助けようとする。・・・
ranpomayuzumivhs
静子の本当の正体は一体何だったのか?は全く分らず、です。情報としての事実は、静子は子供の頃失踪癖があり、いない時に両親が心中した、最近骨董品屋の旦那が長持に閉じ込められて死亡、未亡人となる、です。乱歩は明智小五郎を分身にして、新作を書きながら静子の心中を探ります。作品の中の静子=れい子は子供の頃、屋根裏部屋で母の心中する顔を見て、嬉しそうな顔を見て、彼女の心にサド性が目覚める。そして前夫が死んだあと熱海の大河原侯爵に嫁ぎ、Mの侯爵を夜な夜な虐めまくる。更に馬にまたがり断崖に向かってチキンレースに興じる侯爵を殺害(馬に興奮剤を入れた草を食べさせ、断崖から飛ばせた疑い有り)。そして、それを長持に入った明智に告白してから毒を飲んで自殺した、という感じ。しかしこれは、あくまでも乱歩の創造の世界であり、さて現実の静子はどうなのよぉ〜?現実の静子の生死、目的は不安定にしてあり、静子自身も控えめな日本の女って感じ。音響も質素で結構詩的な作品と言えます。そして、最後に乱歩が骨董屋に行くと、新主人が静子は熱海の侯爵の元に嫁いだと言う。そんな馬鹿な、それは俺の小説じゃないか?焦った乱歩は走りまくり熱海に行き、ある小屋に乱入する。するとそこは自分が捕らわれている夢の森だった。乱歩は静子と再会、抱き合い、彼女は「やっと帰ってきてくれた」と嬉しそうに言う。その後、木のそばで一人佇む乱歩の影が映って、終演となりました。
このラストですけど、骨董屋からすべて乱歩の夢の世界なのか?はたまた事実で、死んだれい子(=静子)の霊が乱歩を呼び寄せて一緒にあの世に誘ったのか?ラストも不明なままのミステリーでした。それでもスリリングで面白かったですよ。

以下、ウィキペディアより概要を引用。
「映画生誕100年・江戸川乱歩生誕100周年・松竹創業100周年記念作品」と銘打って公開された。プロデューサーによる作り直し」、「ふたりの監督による2バージョン同時公開」、「劇中のサブリミナル効果」など映画内外の数々のエピソードが話題になった作品である。プロデューサーの奥山和由は監督の黛りんたろうが完成させた作品に納得できず、自らメガホンを取って全体の70%を撮り直すなど映画を再構成、自分なりの作品を作り上げた。それぞれは「黛バージョン」「奥山バージョン」と呼ばれ、同じ日に別々の劇場で公開された。上映時間はそれぞれ93分と98分。配給収入は12億円。1995年5月27日には「奥山バージョン」に未公開シーンを加えてさらに再編集したものに、千住明による音楽(指揮:ヴァーツラフ・ターリヒ、演奏:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団)を追加した上映時間100分の「インターナショナル・ヴァージョン」も公開された。

1994年 日本・松竹映画
監督、脚本:黛まゆずみりんたろう
製作:奥山和由
プロデューサー:西岡義信
原作:江戸川乱歩
脚本:奥山和由、榎祐平
撮影:森田富士郎
音楽:川崎真弘
音楽プロデューサー:佐々木麻美子
助監督:原田真治
出演:竹中直人 江戸川乱歩
羽田美智子 静子、乱歩の作品中では、れい子
香川照之 横溝正史
佐野史郎 検閲課官吏
平幹二朗 大河原侯爵
本木雅弘 探偵・明智小五郎、乱歩の作品の中では彼の分身である。
樹木希林 根津界隈の主婦、女中頭(乱歩作品中)
岸部一徳 カフェの主人、帝室美術館門番(乱歩作品中)
高城淳一 執事藤森(乱歩作品中)
江戸家猫八 骨董屋主人
マルセ太郎 円タクの運転手