ある日、ブレーメンの不動産屋に勤めるハーカーはレンフィールドから仕事の依頼を受ける。それはトランシルバニアに住むオルロック伯爵がブレーメンに家を買いたいというものだった。早速妻ニーナを説得して、親友のウエスネラと彼の妻ルーシーに預け、オルロック伯爵の城を目指す。ハーカーは道すがら、怯える村人から「吸血鬼」の噂を耳にするものの、まったく信用していなかった。宿に置いてある吸血鬼の本を読んでもせせら笑っていた。そして城に着き伯爵にディナーを御馳走になる。パンをナイフで切る時、手を切り血を流すハーカー。すると伯爵はその血に飛びつき、嬉しそうにすすったのだ。気味が悪かったが仕事の件もあるし、伯爵は冷静さを取り戻したので暖炉脇で歓談し始めた。ハーカーはそのまま椅子で眠ってしまい翌朝ハーカーの首筋には奇妙な2つの傷がついていた。その夜、商談はまとまったが、部屋で吸血鬼の本を再び読んだハーカーはオルロック伯爵が吸血鬼ノスフェラトゥ(不死者)だと気づくが、時既に遅し。2晩目も餌食になる。なんとか死なずに生き延びたハーカーは窓からシーツを繋ぎ合せて脱走した。しかし契約でハーカーの家の隣にブレーメンの家を手に入れた伯爵も、また海路からブレーメンを目指していた。・・・

吸血鬼ノスフェラトゥ amazon


現存している最古の吸血鬼映画ノスフェラトゥ。ブラム・ストーカー夫人の許可が下りず、ドラキュラという名前を使用できなかったサイレント映画です。オイラはサイレント映画は小学校の時、見たチャップリン以来ですね。壮厳なパイプ・オルガンの音楽が鳴り響き映画はスタートしますが、延々とこれが鳴っているのには、げんなり。もうちょっと静かな曲調にするとか工夫して欲しかったです。でも字幕はタイミング良く入ってくるので、違和感無く見れます。画質はうんぬん言うことは出来ません。このフィルムは1922年ですから。さて、この映画の見どころですが、、吸血鬼オルロック伯爵役のマックス・シュレックの怪人ぶりは凄まじい。スキンヘッド、ギョロ目、大きな鼻と、とがった耳、長い爪を持ちヒョロヒョロの体で直立不動で歩く。もう完全にモンスターでした。アメリカで、この役者は本物の吸血鬼じゃないかとジョークが出ていましたが思わず納得しますね。但し死に方は無様そのもの。純粋な心のニーナの血を吸うのに時間を忘れ、朝になってしまったのです。そして朝日を浴びて、あっという間に燃え尽きました。またヴァン・ヘルシング教授は出てきますが食虫植物の観察をしてるだけ。まったく吸血鬼退治に関与してません。意味無いおっさんでした。(実は日本語字幕でヴァン・ヘルシングと書いてあるだけでした。ヴァン・ヘルシングという役名は本編にはありません。もともとヴァン・ヘルシングの役はこの映画の脚本から省かれていたのでしょう。)ところで、この映画ならではの吸血鬼解釈があります。この映画では血を吸われた犠牲者は吸血鬼になりません。吸われ過ぎたら死ぬだけです。また、オルロック伯爵は昼間寝る時は棺桶ですが、その下の土は呪われた故郷の土じゃないと眠れないそうです。ですからブレーメンに渡航する時、一緒にトランシルバニアの土を持ってきました。

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現在日本で売られているDVDは3種類。一つは新訳版79分DVD(WHDジャパン製作+フォワード販売500円、以下WHDと称す、これはオルロック伯爵ではなくドラキュラ伯爵とクレジット表記されているアメリカ公開バージョン。)、一つは64分版(IVC発売、同じアメリカ公開版で尺数が64分版だがフィルムスピードが速く映像的に大きなカットは無いもよう。音楽はU.S.A BLESS。)、そして94分版(ドイツ・オリジナル版で、独のムルナウ財団の修復プリントを使ったDVD。全編にセピア、イエロー、ブルーのフィルターがかけてある)。今回、オイラは一番安い新訳版を買って鑑賞しました。ちなみに上記トレイラーはオリジナル版で、新訳版とはBGM違い、フィルターがかけられ、リマスターされて、ちょっとイメージが違います。日本の紀伊國屋書店発売DVD(94分)はディスク1枚+ブックレットですが、米国のリマスターDVDはアメリカImage製81分ドイツKino製93分がありまっす。最強ヴァージョンはKino製2枚組The Ultimate Edition94分です。さて、ここで疑問が一つ、紀伊國屋書店発売版のマスターはImageなのかKinoなのか?仕様を見ると、Kino製2枚組The Ultimate Editionの特典の一部が一致、尺数も94分で一致しますので、Kino製2枚組がマスターだと思われます。

1922年 ドイツ モノクロ Nosferatu, eine Symphonie des Grauens ★★★
監督:F.W. Murnau
脚本:Henrik Galeen
原作:Bram Stoker novel "Dracula" (uncredited)
音楽:James Bernard (1997)
Hans Erdmann
Carlos U. Garza
Timothy Howard (1991)
Richard Marriott (1989) (as Club Foot Orchestra)
Richard O'Meara
Hans Posegga (1989)
Peter Schirmann (1969)
Bernardo Uzeda (2006 version)
Bernd Wilden
出演:Max Schreck ... Graf Orlok 、WHDのクレジットはドラキュラ伯爵でしたが日本語字幕はオルロック伯爵でした。
2つごちゃまぜになっていました。
Gustav von Wangenheim ... Hutter (フッター) 、日本語字幕はジョナサン・ハーカー。
Greta Schröder ... Ellen Hutter, seine Frau (エレン、フッターの妻) 、日本語字幕はニーナ・ハーカー。
Alexander Granach ... Knock, ein Häusermakler (ノック) 、オルロック伯爵の下僕で
不動産ブローカー・レンフィールド(日本語字幕)
Georg H. Schnell ... Westenra - Hutters Freund 、日本語字幕はウエスネラ。ハーカーの親友。
Ruth Landshoff ... Lucy, Westenras Frau、日本語字幕はルーシー、ウエスネラの妻。
注)上のクレジットはIMDBより、ドイツのオリジナルのもの。新訳版DVDの役名は2つがごちゃまぜでした。
また世界には音楽違いが多数あるようです。