1960年代後半の日本。羽田空港から伊丹空港に向かう民間旅客機に時限爆弾が積まれているという情報が入る。コ・パイロットの杉坂は、乗客の荷物検査を開始。そして外国大使を暗殺して逃亡中だったテロリスト・寺岡のライフルを発見する。寺岡は身分がばれたと焦りハイジャックを敢行する。その直後、旅客機は謎の飛行物体と接触して、見知らぬ山中に不時着した。奇跡的に生き残ったのは10人。杉坂、スチュワーデスの朝倉、次期総理大臣候補である政治家・真野、兵器製造会社の重役・徳安とその妻で真野の愛人でもある法子、精神科医の百武、宇宙生物学者の佐賀、ベトナム戦争で夫と死別した未亡人・ニール、時限爆弾を持ち込んだ自殺志願者の松宮、そしてテロリスト寺岡。

吸血鬼ゴケミドロ amazon


スチュワーデスの朝倉を人質に逃走した寺岡は、岩陰でオレンジ色に輝くUFOを発見、吸い込まれるように中に入っていく。そして寺岡の額が縦にぱっくりと裂け、その中にアメーバ状の宇宙生物・ゴケミドロが侵入していった。血液を常食とするゴケミドロに寄生された人間は吸血鬼となるのだ。そして寺岡は生き残った人々を襲い始める。吸血鬼の魔手から逃れようとエゴを剥き出しにした争いで、また吸血鬼に襲われて次々と死んでいく生存者。最後まで冷静さを失わなかった杉坂と朝倉はかろうじて吸血鬼の襲撃から逃れ、ようやく人里(有料道路の料金所)にたどり着くが、目に入る限りの人間は全て血を吸われて死んでいた。ゴケミドロの地球総攻撃は既に始まっていたのだ。上空を飛ぶUFOを見て、杉坂は叫ぶ。「遅すぎたんだ。何もかも遅すぎたんだ。」そして、ゴケミドロの宇宙船は大挙して地球に押し寄せ、地球をクレーターの月のように変貌させてしまった。・・・幕

宇宙生物の地球侵略モノ。音楽が怪談調のヒュー・ドロドロって感じ。吸血鬼は出てきますが、恐怖度への貢献は余りありません。冒頭から外国大使暗殺、爆弾テロ、宇宙船とたたみかけるように飛び出してきます。いったいどれが主題になるのか?少し混乱しました。そして宇宙生物ゴケミドロが吸血鬼を作り出し侵略を始める訳ですが、血を吸われた人は死ぬだけで、吸血鬼に変身する訳では無い。伝染性が無いのです。ここら辺の脚本が吸血鬼が恐怖の原因にならないのかもしれませんね。また人間のエゴや戦争批判は、この当時の日本映画にはよくあるパターン。珍しくはありませんでした。逆に戦争批判は強調し過ぎな感もありますね。
以下トリビアをWikipediaから引用。
タイトルの「ゴケミドロ」の由来は、京都にある「苔寺」と「深泥池」を合わした造語であり、命名者はうしおそうじである。本作品は前年の1967年に、ピープロが企画したテレビ特撮シリーズが元になっている。内容は、地球に不時着したUFOに乗っていた、人間に乗り移れる善玉の宇宙人と、その機内食料だったが野性に還り凶暴化した宇宙生物「ゴケミドロ」との戦いを描いたもので高山良策によるゴケミドロのぬいぐるみが登場するパイロットフィルムも製作された。こういった経緯で、特撮はピープロが担当している。ゴケミドロの円盤はそのまま『宇宙猿人ゴリ』のゴリ博士の円盤に流用されている。 クエンティン・タランティーノ監督も本作の大ファンであることを公言していて、映画『キル・ビル』では、本作の1シーン(冒頭の旅客機操縦席から見える真っ赤な空)のオマージュが見られる。

1968年 日本 松竹映画 GOKE、Body-Snatcher GOKE、
Body Snatcher from Hell ★☆
監督:佐藤肇
脚本:高久進、小林久三
製作:猪股尭
撮影:平瀬静雄
音楽:菊池俊輔
美術:芳野尹孝
編集:寺田昭光
特撮:ピープロ
出演:吉田輝雄 ... 杉板英(パイロット)
佐藤友美 ... 朝倉かずみ(スチュワーデス)
高橋昌也 ... 佐賀敏行(宇宙生物学者)
高英男 ... 寺岡博士
金子信雄 ... 徳安
楠侑子 ... 徳安法子
加藤和夫 百武
キャッシィ・ホーラン ... ニール
北村英三 ... 真野剛造
山本紀彦 ... 松宮
西本祐行 ... 機長