物質移動と遺伝子組みかえの研究をしている科学者のセス・ブランドルは、エレクトリック展覧会の会場で科学雑誌の女性編集者ヴェロニカと知り合った。ブランドルは彼女を自宅兼研究室に招き、研究中のテレポッドを披露した。テレポッドとは物質転送装置で、生物の場合は解体と再生により遥か離れた場所に移動できるという画期的な発明だった。ヴェロニカはスクープ記事にしたいと言ったが、発表するには早すぎるとしてブランドルはそれを止めた。

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ヴェロニカは最近まで上司の編集長ボーランズと恋愛関係にあったが、ブランドルの真面目な研究態度に徐々に惹かれはじめ、やがてベッドを共にする仲になった。テレポッドの実験は大詰めの段階を迎え、ヒヒを転送したが失敗し、ヒヒは表裏が反対になり肉塊と化した。生肉の実験など更に研究を重ね、ヒヒを再度実験。ついに生物の転送に成功する。その日、ボーランズはテレポッドを記事にしようと承認のラフを送っていた。それをみつけたヴェロニカは転送成功のお祝いをしようと言うブランドルを退け、ボーランズに記事差し止めを依頼に行く。ブランドルはヴェロニカとボーランズの仲に気づき嫉妬し、酒に酔った勢いで、テレポッドに入り自分の肉体を使って転送実験を行う。その時、テレポッドの中に蝿が1匹入ったのに気がつかなかった。転送は見事に成功したかにみえたが、その夜以降、ブランドルの生活と肉体に異変が生じはじめた。体操選手のように筋肉が付きはじめ、SEXも異常に強くなり、肉体の奥底から力が湧き上がってくるのだ。そして以前、電子部品で背中に傷つけた所から針金のように太い毛がはえはじめた。ヴェロニカは恋人の異常に気づき背中の体毛を切り取り、検査したところそれは人間の毛ではなく昆虫の毛との結果が出た。ブランドルの魂と肉体は蝿との遺伝子の融合によって蝿男と化したのだ。歯が抜けはじめ、指の爪が剥れ、えたいの知れない液体を吐き出すようになった。ヴェロニカが妊娠していることが分かり、怪物の子が生まれるのではないかと恐れた彼女は産婦人科医を訪ね堕胎手術を行う決心をした。それを知ったブランドルは病院を襲い、ヴェロニカを誘拐。そして、ボーランズがヴェロニカを助けようと銃を持ってブランドルの家を訪ねる。だが逆に手や足にブランドルの溶解液を浴びせられてしまう。ブランドルは変身が増し、ついに完全なる蝿の姿になってしまう。そして人間の遺伝子比率を増やし生き延びる為、愛するヴェロニカと胎内の赤ん坊と3人で一体になろうとする。ヴェロニカをテレポッドに押し込み、自らも、もう一方のテレポッドに入る。その時、ボーランズがヴェロニカのテレポッドのコードを切断。ブランドル・フライが外へ出ようとした時、転送が開始。なんとブランドル・フライはテレポッドと融合して金属付きのブランドル・フライになってしまう。彼は這いずり、ヴェロニカに頭を撃って殺してくれと嘆願する。ヴェロニカは泣く泣く引き金を引いた。・・・幕

クローネンバーグ監督の蠅男の恐怖のリメイク作。といっても、ただ話をなぞっているんじゃない。現代的な解釈や、蝿男の変身シーンはより生生しく、グロくなっています。でもストーリーの骨子はホラー映画っていうより、悲劇の科学者っていうSFもんで、余り恐くはありません。コンピュータに生肉の感覚、新鮮さを教える(インプットする)ブランドルの姿は、一生懸命人工知能・・・AIを作ろうとしています。映画の世界では2001年宇宙の旅に出てくるHAL9000がありますが、ここら辺の演出も、蠅男の恐怖との違いを際立たせていて、現代的(あくまでも1986年当時という意味でね)と感じました。また人物設定でも、セス・ブランドルの経歴は20歳でF32のプロジェクト・チームにいたとか、(現実にはF32は無いので、以前ボーイング社で開発していたX32と思われる)軍も一目置く天才科学者としてあります。ホラーファンじゃなくても、ドラマとして見ても面白い作品でお勧めでっす。

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1986年 アメリカ The Fly ★★★★
監督:David Cronenberg
原作:George Langelan
脚本:Charles Edward Pogue David Cronenberg
キャラクター・デザイン:Chris Walas INC.
音楽:Howard Shore
出演:Jeff Goldblum(Seth Brundle)
Geena Davis(Veronica Quaife)
John Getz (Stathis Borans)
Joyu Boushel(Tawny)
Les Carlson(Dr. Cheevers)
David Cronenberg(Gynecologist、ヴェロニカの夢に出てくる産婦人科医、監督自ら出演)