ある日、故・間宮一郎画伯の古びた屋敷をTVの取材チームが訪れた。スタッフはディレクターの早川秋子、プロデューサーの星野和夫、カメラマンの田口亮、レポーターであり絵画の修復家のアスカ、それに夏休み中の和夫の娘・エミも同行した。今回の取材は30年前の間宮の幻の壁画だ。エミは母を亡くしてから秋子を慕っており、和夫と秋子の間にもほのかな恋愛感情があった。しかし、この屋敷は地元でたたりが起きる幽霊屋敷として有名だった。・・・

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幽霊屋敷を題材にしたホラーですが、テーマは愛に重点が置かれていました。和夫のエミへの愛、秋子の和夫やエミに対する愛、そして怨霊間宮の子供への愛ですね。完全にマニア向けに作っていない作品ですが、エクソシストの特殊メーキャップ・アーティスト・ディック・スミスを呼んできたあたりは、凄いっす。彼の仕事ぶりはカメラマン田口とアスカと山村が死ぬシーンに顕著に表れています。古舘伊知郎・・・まだスリムで若いっす。でも、この衣装はウルトラマンの化学特捜隊ですかぁ。笑っちゃいました。NOKKOの恐怖演技はイマイチ。叫び声がキャーキャー言ってるだけ。本当に恐い時は、叫び声っていうより、唸り声に近いんじゃないかな。黒田福美さんの演技を見習って欲しかったね。監督は伊丹十三に抜擢され、本作品によりメジャーデビューを果した「CURE キュア」「ドッペルゲンガー」「叫」の黒沢清。彼は未だかけだしだったんですね。黒沢清が監督だったって事は後で知りました。当時はマルサの女で伊丹十三さんの方が有名だしね。イタニ特殊衣装は辻村ジュサブローが担当。そう言えばラストの怨霊の雰囲気は、里美八犬伝風といえます。また劇中で伊丹自身が、エミを助けに行くシーンで歌っている歌は彼が若い頃に大変流行っていた、浅草オペラのヒットナンバー「ディアポロの歌」だそうです。オイラは知らなかったので聞いた時、軍歌かぁと思ってしまいました。最後に、この作品、何故DVDが出ていないのか?疑問でしたが、下記のような経緯があったのです。
ウィキペディアから引用
スウィートホームを巡る法廷闘争 映画公開後、東宝よりレンタルビデオ用のビデオテープが発売されたが、このビデオを巡って監督の黒沢が伊丹プロを提訴した。ビデオの印税が黒沢の元へ払われていないこと、ビデオ化の際、黒沢の了承なしに勝手に編集が行われていることなどが争点となったが、最高裁までもつれ込んだ裁判は黒沢が敗訴している。その後、ビデオは廃盤となり(現在でも比較的多くレンタル店に在庫がある)、この法廷闘争の影響で現在までにDVD化の動きも全く見られず、今後のソフト化も厳しいものと思われる。

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1989年 日本 東宝映画 SWEET HOME ★★☆
監督、脚本:黒沢清
制作総指揮:伊丹十三
製作:伊丹プロダクション
音楽:松浦雅也
特殊メイク:ディック・スミス
出演:宮本信子(早川秋子、TVディレクター)
山城新伍(星野和夫、TVプロデューサー)
NOKKO=レベッカのボーカル(星野エミ、和夫の娘)
古舘伊知郎(田口亮、カメラマン)
黒田福美(アスカ、TVリポーター、絵画の修復家)
益岡徹(役場の上役)
三谷昇(役場の担当役人)
渡辺まち子(間宮夫人、悪霊)
伊丹十三(山村健一、地元のガソリンスタンド経営者)