心理学者ルイスの息子であるマークは幼い頃、恐怖が人間に与える影響について父親から絶えず実験をされていた。例えば眠るマークに父はトカゲを投げつけ、恐怖のあまり泣き叫ぶ様を撮影していた。度重なる実験は、次第にマークの人格を変えていった。成長したマークは映画スタジオの撮影助手になり趣味でドキュメンタリーを撮っていた。テーマは「恐怖」。カメラの先端にナイフを取りつけ、恐怖におののく女性の断末魔の表情を撮影しながら殺害していたのだ。・・・

血を吸うカメラ amazon
1500円廉価版DVDが、2010年4月2日発売。但し廉価版は尺数が5分短いです。
 
幼少のトラウマが、大人になって覗き&変態殺人鬼にしてしまう。ホラー映画では格好の題材です。でも主人公のマークは完全な変態って訳ではありません。ヘレンに対する恋心は本物だったと思うし、ただカメラを持つと恐怖にひきつる顔を撮りたいっていう欲望がにじみ出てきてしまうのでした。完全な悪人、キラーではなくて、自分の癖に悩む自閉症的な男をカール・ベームが演じています。またJAZZ風なピアノ・ソロが扇情的なマークの心情を表現していて、超お洒落でした。予断ですが子供時代のマークと父は、そのままマイケル・パウエル監督父子が演じていましたし、金髪のポルノ写真モデルのミリーを演じたパメラ・グリーン(下の写真の左下)は、当時グラビア・クイーンであり、ポルノ映画にも出演していたらしいです。 更に原題の"Peeping Tom"とは、覗き屋、出歯亀のことです。この表現には由来があって・・・11世紀にイングランド中部コヴェントリーの領主が領民に重い税金をかけようとした時、その奥方であるゴダイバ夫人(Lady Godiva)が民を苦しめないで欲しいと懇願した。 領主は妻に"おまえが裸で町を一周できるなら考え直してやる"と冗談交じりに言ったのだが、夫人はそれを実行してしまった。優しいゴダイバ夫人が恥ずかしい思いをしないように、みな通りに面した窓を閉じ、彼女は人っ子ひとりいない町内を馬に乗って裸で一周した。めでたしめでたし・・・のはずだったが、ただひとり洋服屋のトムという男が裸のゴダイバ夫人を覗き見していたのだ。 覗き屋トム(Peeping Tom)は罰が当たって目が潰れてしまった、という物です。参考までに。

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ヴィヴィアン役(美人ですな)のモイラ・シアラーとヘレン役のアンナ・マッセイ
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1960年 イギリス PEEPING TOM ★★☆
監督、製作:Michael Powell 
原案、脚本:Leo Marks
音楽:Brian Easdale
出演:Karlheinz Böhm ... Mark Lewis (as Carl Boehm)
Moira Shearer... Vivian、2番目の犠牲者、踊りが上手い代役女優ヴィヴィアン
Anna Massey... Helen Stephens
Maxine Audley... Mrs. Stephens、盲目のスティーブンス夫人=ヘレンの母
Brenda Bruce... Dora
Miles Malleson... Elderly gentleman customer、エロ写真を買いに来た初老の紳士
Esmond Knight... Arthur Baden、アーサーバーデン=劇中の映画監督
Martin Miller... Dr. Rosan
Michael Goodliffe... Don Jarvis
Jack Watson... Chief Insp. Gregg
Shirley Anne Field... Diane Ashley
Pamela Green... Milly, the model
Susan Travers ... Lorraine, the model (uncredited)、口が引きつったモデル・ロレイン
Nigel Davenport ... Det. Sgt. Miller (uncredited)、ミラー巡査
Michael Powell ... Mark's father, A.N. Lewis (uncredited)