カナダ人物理化学者のアンドレが上半身を潰された死体で発見される。容疑者は現場から逃げてゆくのを目撃されたアンドレの妻ヘレンだった。妻は警部に信じられない話を語り出す。物理化学者のアンドレは物体を瞬時に別の場所に移動させる物質電送機を発明した。彼はカップや猫を用い電送実験を成功させる。そして自身で電送の人体実験を行い成功したかに見えた。しかし、機械の中にハエが紛れ込んでいたため、電送の最中に両者が交じり合い、アンドレは頭がハエで体は人間、ハエは頭が人間で体がハエになってしまう。頭がハエの人間になってしまった物理化学者のアンドレとヘレンは、頭が人間のハエを捕まえて再度物質電送機にかけて元に戻そうと計画する。だが頭が人間のハエはなかなか見つからない。そのうちに、頭がハエとなってしまったアンドレは、自分の人間の意識がハエの意識になってくることに危機感を抱きはじめた。彼はその研究をすべて破棄した。自身もまた痕跡の残らないよう、妻に懇願し上半身を圧搾機で潰させ死を選んだというのだ。ヘレンの意外な話を警部は信じられないでいたが、庭でショッキングな証拠を目にするのだった。・・・

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The Fly 1958 trailer
蝿男の恐怖 amazon
 
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1987年のクローネンバーグの「ザ・フライ」の元ネタ。ストーリーはいきなり夫を50トン・プレス機で押しつぶして殺す妻。その理由を殺された夫の兄、警察が解明していくという回顧録のような構成です。物質転送装置の発明により自ら蝿男になってしまう夫:アンドレの悲劇が綴られています。印象的なシーンは1回目の転送失敗作:メイドインジャパンの家宝の皿。この時代日本の物は貴重だったんでしょうか?(笑)そして転送2回目:愛猫の転送に失敗して異次元から聞こえる愛猫の叫び~ニャ~~~~、猫マニアのオイラとしては大変かわいそうですよ。また蝿男と化した夫が黒板に書く妻へのメッセージ「LOVE YOU」、蝿に脳を乗っ取られそうになり左手、顔が蝿になっても必死に理性で抵抗する夫、物悲しい男のストーリーなのです。名声欲や研究心に没頭した挙句の結末とは言え、妻への純真な愛から自殺を決意するアンドレ、泣けますなぁ。
ここまではクローネンバーグと同じですが、ここからが違う。さすがオリジナル、脚本に捻りがあります。伊達にヴィンセント・プライスが出ているのではありませんでした。そうそう演出で奇抜だったのが蝿男から見た映像、複眼描写ですね。怯える妻の顔がいくつも画面に重なっていました。斬新なアイデアですね。

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1958年 アメリカ The Fly
監督:Kurt Neumann
脚本:James Clavell
原作:George Langelaan、ジョルジュ・ランジュラン(『蝿』)
音楽:Paul Sawtell
特撮:L.B. Abbott
メイクアップ:Ben Nye(実作業は『放射能X』(1954年)や『恐怖のワニ人間』(1959年)の
Dick Smithが担当。)
出演:David Hedison ... Andre Delambre (as Al Hedison)
Patricia Owens ... Helene Delambre
Vincent Price ... François Delambre
Herbert Marshall ... Insp. Charas
Kathleen Freeman ... Emma (Delambre maid)
Betty Lou Gerson ... Nurse Andersone
Charles Herbert ... Philippe Delambre