カナダ・ハリファックスの港に可憐で清楚な身なりをした女アデル・ユーゴーが降り立った。フランスの大作家ヴィクトル・ユーゴーの次女である彼女は、かつて一度だけ愛し合った英国騎兵中尉アルバート・ピンソンを追って海を渡ってきたのだった。慎ましい下宿の部屋で来る日も来る日もピンソンにあてた手紙を書き続けるアデルだったが、一度も返信は無く異国での孤独と愛の焦燥にとらわれた彼女は連夜のごとく悪夢を見るようになる。それは敬愛していた姉のレオポルディーヌが舟もろとも溺れ死ぬ夢だった。本屋の主人ホイッスラーからピンソンには多額の借金があるという噂を聞いてもアデルは彼に恋文を届けることをやめない。ついにある日、ピンソンがアデルの下宿にやってきた。慌てて身支度を整えて迎えたアデルをピンソンは冷たく突き放す。彼女と結婚するつもりもなく、もはや関係は終わったのだと。そして両親の元へ帰るように諭した。アデルはピンソンに冷たい仕打ちを受けてもなお、彼に恋することを止めようとせず、何かに駆り立てられるかのように自らを狂気の淵へと追いやっていく。・・・
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